古来より神殿の建築材や防腐剤、そして深い瞑想の助けとして愛されてきたシダーウッド。
その香りは、私たちの脊椎を一本の太い樹木のように安定させ、揺るぎない「自己」を確立させる力を持っています。
マツ科の「アトラス」とヒノキ科の「バージニア」という、異なる種でありながら同じ名を持つ二つの精油の決定的な違いと共通点、解剖生理学的なメカニズム、そしてLuLu Ange流の「魂のグラウンディング術」まで、その深淵なる世界を徹底解説します。
シダーウッドの基本データ
シダーウッドを知る第一歩は、この二つの違いを正しく理解することから始まります。
二つの「シダー」・詳細データ一覧表
| 項目 | シダーウッド・アトラス | シダーウッド・バージニア |
| 学名 | Cedrus atlantica | Juniperus virginiana |
| 科名 | マツ科(真のシダー) | ヒノキ科(実はジュニパーの近縁) |
| 主な産地 | モロッコ(アトラス山脈) | アメリカ(バージニア州など) |
| 抽出部位 | 木部(心材) | 木部(心材) |
| 抽出方法 | 水蒸気蒸留法 | 水蒸気蒸留法 |
| 香りの特徴 | 甘く、ややスパイシーで動物的な深み | 鉛筆の削りかすのような、ドライで清々しい木質香 |
| 主な成分 | セドロール、アトラントン(ケトン類) | セドロール、セドレン |
| ノート | ベースノート | ベースノート |
| BF(ブレンドファクター) | 4 | 4 |
| 支配星 | 木星(Jupiter):拡大、保護、慈愛 | 土星(Saturn):規律、集中、削ぎ落とし |
| タロット | 4. 皇帝(The Emperor) | 9. 隠者(The Hermit) |
| 対応チャクラ | 第1(基底部)・第4(心臓) | 第1(基底部)・第6(眉間) |
【ブレンドの知恵】ブレンドファクター(BF)「4」の安定感
シダーウッド(両種)のBFは「4」です。
香りの持続性が非常に高く、ブレンドの土台(ベースノート)として全体をどっしりと支えます。
時間が経つほどに深みを増すため、揮発の早いシトラス系やフローラル系を繋ぎ止める「重し」の役割を果たします。
このような悩みを持つ方に、シダーウッドは「静寂の柱」を届けます
- 「自分の軸」がブレやすく、周囲の意見や環境に振り回されて疲弊している方
脊椎を支えるような力強いエネルギーで、精神的な強さと独立心を養います。 - 将来への不安や孤独感で、地に足がつかない(ふわふわした)感覚がある方
強力なグラウンディング作用により、今この瞬間の現実にしっかりと根を張る手助けをします。 - 肌や頭皮のベタつき(過剰な皮脂)、むくみが気になる方
「乾燥させる」という共通の性質が、肉体の中の余分な水分や脂分を適切にコントロールします。 - 瞑想を深めたいが、雑念が多くて集中できない方
アトラスは「包容力」を、バージニアは「集中」を与え、静寂の空間を作り出します。 - リンパの流れが滞り、体が重だるい、またはセルライトが気になる方
体内循環を促し、「溜め込みすぎたもの」を流し出すサポートをします。
心・体・魂:三位一体(トリニティ)への作用
なぜ科目が違うのに「シダーウッド」として共通の癒しがあるのか。
それは、両者が持つ「セドロール」という成分が、魂の深層に共通の響きをもたらすからです。
【体(Physical)】:排出と引き締めのスペシャリスト
肉体レベルにおいて、シダーウッドは「浄化と循環」の精油です。
- リンパ・静脈のうっ滞除去:
両種ともに、滞った体液の流れをスムーズにします。
むくみの解消や、脂肪燃焼のサポートとして多用されます。 - 粘膜の乾燥と去痰:
呼吸器の過剰な粘液を抑え、痰を出しやすくします。 - 皮脂のバランス調整:
脂性肌やニキビ、頭皮のフケ(脂性)に対し、組織をキュッと引き締める収斂作用を発揮します。
【心(Emotional)】:揺るぎない意志と精神的強壮
精神レベルにおいて、シダーウッドは「内なる神殿」を構築します。
- アトラス(木星)の作用:
傷ついた自尊心を癒し、「大丈夫だ」という包容力で心を満たします。勇気が必要な時に。 - バージニア(土星)の作用:
感情の嵐を鎮め、冷静沈着さを取り戻させます。無駄を削ぎ落とし、本質に集中したい時に。
【魂(Spiritual)】:霊的進化の触媒
霊性レベルにおいて、シダーウッドは「天と地の直通線」を確立します。
- 脊椎のエネルギー:
- スピリチュアルな視点では、シダーウッドは脊椎(スシュムナー・ナーディ)を浄化すると言われます。
天からのエネルギーを正しく大地へ流すための「柱」を立てるのです。 - 神聖なる空間の維持:
古代、レバノン杉(アトラスの近縁)が神殿の建材とされたように、あなたのオーラを「神聖な場所」として保ち、外部の低次なエネルギーを寄せ付けない結界を張ります。
なぜ二つの樹木は「シダー」の名を共有したのか?
マツ科のアトラスと、ヒノキ科のバージニア。
植物学的に異なる二つの樹木が、なぜ同じ「シダー(杉)」の名で呼ばれ、同様に崇められてきたのでしょうか。
その答えは、言語のルーツと、古代人が植物に見出した「霊的な共通点」にあります。

名前の由来:「Kedron(力)」の継承
「シダー(Cedar)」の語源は、アラビア語の「Kedron(力)」や「Kedr(強い)」に由来すると言われています。
- 真のシダー(旧世界):
本来、この名はレバノン杉(アトラスシダーの近縁種)を指す言葉でした。 - 名前の共有(新世界):
大航海時代、アメリカ大陸に渡った人々が、そこで自生していた「バージニア・ジュニパー」の香りを嗅いだ時、その芳香が聖書にあるレバノン杉のように神聖で、かつ木材が腐りにくく強靭であったことから、敬意を込めて「シダー(赤杉)」と呼んだのです。
つまり、植物分類上の種別ではなく、「力強く、香り高く、腐らない聖なる木」という「霊的な称号」として、この名は共有されたのです。
東洋(アトラス)の伝承:ソロモンの神殿と「破壊されない肉体」
アトラスシダーのルーツであるレバノン杉は、世界最古の文学『ギルガメッシュ叙事詩』にも登場する聖なる森の王です。
- 神殿の柱:
旧約聖書において、ソロモン王がエルサレム神殿を建立する際、その柱や梁(はり)として選んだのがこの木でした。
シダーは「腐敗しない=永遠」の象徴であり、神の家を支えるのに最もふさわしいとされたのです。 - ミイラ作り:
古代エジプト人は、シダーウッドのオイルをミイラ作りに使用しました。
防腐力の高いこの香油を遺体に塗ることは、肉体を腐敗から守り、魂が戻ってくるための「永遠の器」を準備する神聖な儀式でした。
西洋(バージニア)の伝承:ネイティブアメリカンの「生命の木」
一方、北米のバージニアシダー(レッドシダー)もまた、ネイティブアメリカンの部族にとって欠かせない聖なる木でした。
- 浄化の儀式(スマッジング):
ホワイトセージと同様に、シダーの葉や木片を焚く煙は、祈りを天(グレートスピリット)に運び、悪霊やネガティブなエネルギーを祓うと信じられてきました。 - 守護のトーテム:
病気や悪夢から身を守るため、シダーの木片をお守り袋(メディスンバッグ)に入れて持ち歩く習慣は、現代の「お守りアロマ」のルーツとも言えます。
共通するアーキタイプ(元型):天と地を繋ぐ「軸」
これら二つの歴史が合流する地点、それが現代のアロマテラピーです。
種類は違えど、どちらのシダーも
「天に向かって真っ直ぐ伸び(霊性)」、「腐ることなく(永遠)」、「虫を寄せ付けない(守護)」という共通の性質を持っています。
私たちがシダーウッドの香りを嗅ぐとき、それは数千年前の神殿の柱や、先住民の焚き火の煙と同じ、「魂の腐敗を防ぎ、永遠の強さを取り戻す」という太古の記憶にアクセスしているのです。
魂の処方箋:神秘学・スピリチュアルから見た変容の力
シダーウッドは、私たちの霊的な「背骨」を垂直に整え、天の意志を地上で体現させるための強力な触媒となります。
アトラスとバージニア、それぞれのエネルギー的個性を紐解きます。
支配星:木星(アトラス)と土星(バージニア)
- アトラス(木星/Jupiter):
木星は「拡大」「繁栄」「保護」「慈愛」を司る惑星です。
アトラスの香りは、萎縮してしまった魂を大きく広げ、宇宙の豊かさを受け取る器を作ります。自己肯定感が低い時や、未来への希望が必要な時に、温かな光を注ぎます。 - バージニア(土星/Saturn):
土星は「規律」「制限」「忍耐」「時間」「削ぎ落とし」を司ります。
バージニアの香りは、浮ついた感情を厳格に律し、本質ではないものを削ぎ落とさせます。
困難に立ち向かう忍耐力が必要な時や、内省を深めたい時に、厳かな静寂をもたらします。
タロットカード:4. 皇帝(アトラス)と 9. 隠者(バージニア)
- アトラス【4. 皇帝(The Emperor)】:
どっしりと玉座に座る皇帝のように、揺るぎない自信と統率力を象徴します。
「自分の人生の主権を取り戻す」力を与え、現実世界での基盤を固めます。 - バージニア【9. 隠者(The Hermit)】:
ランタンの火を頼りに暗闇を歩む老賢者のように、内面的な智慧と孤独を愛する力を象徴します。
雑音を断ち切り、自分自身の内側にある「真実の光」を探求するプロセスを支えます。
対応チャクラの深層作用
- 第1チャクラ(ルートチャクラ):
両種ともに共通して、生存の基盤である第1チャクラを強烈に活性化します。
地に足がついていない(グラウンディング不足の)状態を解消し、物理的な肉体と大地をエネルギー的に連結させます。 - 第4チャクラ(ハート:アトラス):
アトラスは胸の緊張を解き、自分と他者への「信頼」を取り戻させます。 - 第6チャクラ(サードアイ:バージニア):
バージニアは眉間の奥をクリアにし、瞑想中に現れる雑念(視覚的なノイズ)を鎮め、一点に集中する洞察力を授けます。
解剖生理学:なぜ科が違っても「似た作用」があるのか?
アトラス(マツ科)とバージニア(ヒノキ科)は植物学上は遠い親戚ですが、分子レベルでは共通の「鍵」を持っています。
それが私たちの生理機能にどのように働きかけるのかを詳説します。
セドロールによる「自律神経のチューニング」
両種に共通して含まれる主役成分「セドロール(セスキテルペンアルコール類)」は、嗅覚を通じてダイレクトに脳の視床下部へアプローチします。

- 副交感神経の優位化:
セドロールの吸入により、心拍数、血圧、呼吸数が有意に低下することが生理学的実験で証明されています。
これは、交感神経の暴走(闘争・逃走反応)を鎮め、肉体を「休息・修復モード」へ強制的に切り替えるスイッチとなります。 - 抗不安メカニズム:
セドロールが脳内のGABA受容体に作用し、神経の過剰な興奮を抑制することで、深いリラックス状態をもたらします。
リンパ・静脈系の「うっ滞除去」メカニズム
シダーウッドは、アロマテラピーにおいて「流す精油」の筆頭に挙げられます。

- 静脈・リンパ管壁の強壮:
含有されるセスキテルペン炭化水素類(セドレンなど)は、静脈やリンパ管の平滑筋に働きかけ、そのポンプ機能をサポートします。 - 体液の循環促進:
組織に停滞した余分な水分や老廃物を、再び静脈・リンパの流れへと押し戻す「ドレナージュ作用」を発揮します。これにより、物理的な「むくみ」や「体の重だるさ」を解消します。
アトラス特有の「アトラントン」と脂肪代謝
マツ科のアトラス種にのみ含まれる「ケトン類(アトラントン)」には、特筆すべき生理作用があります。
- 脂肪溶解のサポート:
脂肪細胞内の代謝を活性化させ、セルライトや皮下脂肪の分解を助ける作用があるとされています。
そのため、スリミング(痩身)を目的としたマッサージには、アトラス種がより推奨されるのです。
皮脂分泌と組織の「収斂(しゅうれん)」
- 皮脂腺への作用:
シダーウッドの分子は、過剰に活動している皮脂腺の働きを抑制し、毛穴周辺の組織をキュッと引き締める収斂作用を持ちます。 - 殺菌と乾燥:
ヒノキ科のバージニアに顕著なセドレンは、防腐・殺菌作用と共に「湿気を払う(乾燥させる)」性質を持ちます。
これは、じくじくと湿った湿疹や、脂っぽい頭皮環境を正常化する生理的根拠となります。
科学が証明する力:睡眠とリラックスのエビデンス
- 睡眠の質の向上:
セドロールの吸入が、入眠までの時間を短縮し、深い眠り(ノンレム睡眠)の時間を延長させることが日本の大学等の研究で明らかにされています。 - 防虫と殺菌:
バージニア州では古くからチェスト(箪笥)の材料として使われてきましたが、これはセドレン等の成分が衣服を食べる虫を寄せ付けず、菌の繁殖を抑えるためです。
LuLu Ange流:ペットの自然療法と皮膚の守護
動物たち、特に「分離不安」や「皮膚の脂漏症」を抱える子にとって、シダーウッドは心強い味方です。
- 分離不安の解消:
飼い主様が不在の際にパニックになる犬に対し、シダーウッドの芳香浴は「どっしりとした安心感」を与えます。 - 脂漏性湿疹のケア:
ベタつきのある皮膚トラブルに対し、低濃度でのスプレーケア。 - 猫への安全性:
シダーウッド(特にアトラス)は、猫にとっても比較的安全に使用できる精油の一つとされていますが、「バージニア」はヒノキ科であり、猫によっては香りが強すぎたり、稀に過敏反応を示す場合があります。
どちらを使用する場合も、猫が自分で場所を選べる自由を確保してください。
【最重要】安全に使用するための禁忌・注意事項
疾患別注意:高血圧と低血圧の方へ
- 低血圧の方:
セドロールの強い鎮静作用により、さらに血圧が下がって眠気やだるさを感じる場合があります。長時間の吸入には注意してください。
【警告】腎臓疾患がある方
シダーウッドに含まれる一部の成分は、腎臓への刺激を伴う可能性があります。
腎機能が低下している方へのマッサージ(経皮吸収)は避け、芳香浴のみに留めるのが安全です。
妊娠中の注意
アトラス種に含まれるケトン類(アトラントン)には、微量ながら通経作用があるため、妊娠中の使用は専門家の指導がない限り避けてください。
バージニア種についても同様に、慎重であるべきです。
魔法のレシピ:軸を整え、富を呼ぶ処方箋
揺るぎない「自分軸」を立てるロールオン
ホホバオイル10ml、シダーウッド・アトラス2滴、サンダルウッド1滴。
- 魔法のポイント:
尾てい骨のあたり(第1チャクラ)や足の裏に。
浮き足立った心を大地に繋ぎ止め、エネルギーの漏れを防ぎます。
豊かさを循環させる「アトラスの香煙」
アトラスの精油をディフューズ。
古来、シダーは「繁栄」の象徴でした。サン・ムーン(太陽と月)のように、オレンジスイートとブレンドすると、陰陽のバランスが整い、幸運を引き寄せます。
シダーウッドが教える「内なる大樹」
シダーウッドは語ります。
「嵐が来ても、あなたの根が深く張っていれば、枝が折れることはあっても木が倒れることはない」と。

慈愛のアトラスか、静寂のバージニアか。今のあなたの魂が必要とする「シダー」を選び、内なる大樹を育ててください。その根は、あなたをどんな時も支え続けることでしょう。


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